厚生年金・国民年金情報通厚生年金・国民年金増額対策室

« 生年月日のまるめ年金記録はどうなったのか? | メイン | 年金生活と少子化問題 »

過程が知りたい!年金記録の照合調査

オンラインにおいても自分の年金記録が喪失していた場合、私たちは書面台帳やマイクロフィルムを調べてもらうために照合調査を依頼します。そして待つこと数ヶ月。何も見つからなかった場合には「調べましたがありませんでした」というそっけない短い文面で結果を伝達されるだけとなります。

しかし、それでは次のような疑問には応えられません。
「どこに存在する台帳・マイクロフィルムを、どのように調べたのか?」
「調べる過程はどのようなものか?」
「調べた担当者は誰か?(実名が無理ならば担当した所属名・役職名)」

年金の照合調査で、結果しか伝えられない不満

年金記録の照合調査には、オンライン上のものから書面台帳・マイクロフィルムの調査というように複数ありますが、その結果は『誰がやっても同じ』ではありません。

まずはオーソドックスな調べ方をして、それでも見つからない時には、知識・経験・ヒラメキ・・・発見の可能性をどれだけ導き出せるか、どれだけ忍耐強く深いところまで調べていけるか、少なからず人に左右されることになります。

年金記録の照合調査をお願いする側としては、新人1年目の担当官に調べてもらえるのか、熟練の担当官に調べてもらえるのか、それはまったくわかりません。

また、本当に調査を行なったのかどうか、どこの場所をどのように調べたのかどうか、まったく見えないところで行なわれていますので、信用するしかないのです。

しかし、この根深い年金不信の中、「ない」という結果しか書いていない通知を見て「やるだけのことはやった」と納得・信用でき人はどれだけいるでしょうか?

照合調査の申立て件数が膨大で担当官の人数が不足している中、物理的に見ても1件1件緻密に調べることができない現状。場合によっては本当にいい加減な照合調査で結果を出していることもないとは言えません。

中には調べる人が調べれば見つかっていたはずの年金記録が「ない」という結論になることも・・・

「照合調査報告書」などがあれば・・・

仮定の話ですが、この照合調査において、結果だけではなく、

  • 調査をした場所(地名・倉庫名等)
  • 調査をした対象(台帳・マイクロフィルム等)
  • 調査をした人(所属・役職名等)
  • 調査の流れ(どういう可能性を考え、どのような流れで調査をしたのか)

というような、過程も通知してもらえたらどうでしょう。
結果だけの通知とは、納得性が断然違ってくると思います。
なかなか難しい面もあるかと思いますが、社保庁の年金問題の取り組みを見えるものとするためには、このような情報もぜひ公開して欲しいところです。

年金記録の照合調査の現場

2007年12月17日のNHKスペシャル「年金記録を取り戻せるか」では、年金記録の照合調査に奮闘する社会保険事務所職員の模様が放映されていました。

「年金記録を見つけるのは生半可ではない」という思いと、「どこか一つでも歯車が狂っていたら見つからなかった」「年金記録が見つかるかどうかは運にも左右される」という思いと、何よりも「テレビが入っていなかった場合、ここまで深く照合調査をしてくれていただろうか」という一抹の不安と、様々な思いを持たせる映像でした。

年金記録の照合調査の舞台裏その1

はじまりはAさんの提出した年金記録(厚生年金)の照会申出書から。

  • 昭和32年12月26日から昭和43年1月4日までの年金記録がない
  • 「大成工業株式会社」という会社で働いていたという記憶がある
  • 該当する厚生年金の年金番号はわからない
  • 1名の同僚の名前はわかる(Bさん)

1・・・まず、Aさんの名前をオンライン上の記録で調べます。 読み方を変え、複数のパターンで調べるものの見つかりませんでした。

2・・・次に会社名からたどります。 オンライン上はもちろん、当時の会社名簿でも調べるものの、その当時には「大成工業株式会社」という会社すら存在しませんでした。

3・・・似たような名前の会社を調べます。 書類から「大成鉄工所」「大成建設産業」「大成電光」など合計8つをピックアップ。1時間半掛けて、保管してあるマイクロフィルムで全社員の名前を調べるものの、Aさんの名前はみつかりませんでした。

4・・・別の手掛かりとして、一緒に働いていたという「Bさん」の記録をオンライン上で確認します。するとCさんと同姓同名の人が複数出てきて、その中に「株式会社大成工業所」に勤めていた人の記録がでてきます。

5・・・「大成工業所」のマイクロフィルムを調べると、Aさんの記録が出てきました。(これで年金記録の照合ができます)

改めてオンライン上で当該年金記録を確認してみると、名前が空欄の状態で出てきました(本来ならばAさんの名前があるべきところ)。この照合調査をした社会保険事務所のベテラン職員も「原因は分からない」ということでした。

しかし、ベテラン職員だからこそあれこれ可能性を探り丁寧な仕事をしたために見つかったものの、どこかの過程で諦めてしまっていてもなんら不思議ではない話です。

照合調査待ちが大量にある中で、特に3番目のように1人の調査で1時間30分も掛けて探してもらえるのかどうなのか。私たちには見えないところの作業だけに、職員のみなさんすべてがこうであって欲しいと願うしかありません。

年金記録が見つかったケースは別として、見つからなかった場合には、やはり「D社とF社のマイクロフィルムを確認したところ見つかりませんでした」というような具体的な調査報告があればうれしいのですが・・・

年金記録の照合調査の舞台裏その2

NHKの番組2つ目の事例は、年金記録が別人のものになっていたという事例です。なんと30年間で合計600万円もの年金が、本人ではなく他人に支払われていたのです。

まずこの調査は通常の年金受給者からの申出で始まったものではなく、社会保険庁から送られてきた年金記録の補正リストの補正作業の一つとして行われました。

※補正リスト・・・社会保険庁に保管される名前や生年月日が欠けているような年金記録をピックアップして補正リストとし、年金番号の払い出し簿等が保管されている社会保険事務所に送り補正を求めるもの。番組で調査した事例では、「170014」という年金番号で、名前も生年月日もわからない年金記録でした。

1・・・年金番号の払い出し簿(社会保険事務所で年金番号を新規に発行した時に、この番号の持ち主の名前などを控えたもの)を探したところ、この「170014」という番号は「~茂太郎」という男性のものであることが判明。

2・・・オンラインで「170014」を検索したところ、昭和39年~昭和44年の5年間の厚生年金の記録がでてきた。(本当に茂太郎さんのものか・・・さらに調べる必要がでてきた)

3・・・画面上にあった会社の番号「3111~」をさらに調べることに。

4・・・会社のコード番号が分かれば会社名が分かる・・・その会社に勤めていた人を調べることも可能になる・・・古いファイルの中から「170014」を探すと、そこには「~茂太郎」ではなく、別人の「~兼一」という人の名前が存在した。(1つの番号を2人の人が使っているということはあり得ない事・・・さらに調べる必要がでてきた。)

5・・・今度は「兼一」という男性についてオンラインで調べることに。すると別の年金記録が出てきて、年金番号は「970014」だった。そして、昭和39年から昭和44年の年金記録が無く、そこに「170014」の記録をあてはめると、日付までピタリと当てはまることが判明。

実は、この記録は「茂太郎」さんのものではなく、「兼一」さんのものだったのです。

なぜこのようなことが起きたのか・・・

兼一さんは、かつて横浜の事業所(A社会保険事務所)と川崎の事業所(B社会保険事務所)を数回転勤し、A社会保険事務所では「××××-970014」という年金番号で管理され、B社会保険事務所では「××××-170014」で管理されていたのです。(B・・・昭和39年~昭和44年の間)

このことから茂太郎さんの年金記録にされていたのです。
不幸な事に、当該昭和39年~昭和44年の間に茂太郎さんは会社で働いていなかった期間であったため、そのまま気づかずにスルーしてしまっていたのです。

この2つ目の話も結果的に年金記録が正常化されたから良いものの、そうでなかった場合には、「誰が」「いつ」「どこまで」調べたか、私たちには知る由もありません・・・

こんな凡ミスも起こりえる・・・

これは2008年3月27日のNHKの番組で放映されたものです。
厚生年金の支給漏れの調査を望む年金受給者が、社会保険事務所に対して書面での調査の申立てを行なったところ、埼玉県の「白子」(管轄は川越社会保険事務所になる)という地名で申し込んだにもかかわらず、社会保険事務所側が勘違いして、埼玉県の「白岡町」(管轄は春日部社会保険事務所になる)だとして取り扱ったために見当違いの調査(川越事務所に調査依頼を出さずに春日部事務所に調査依頼を出した)・・・相談者はそれに気づき、1からやり直すということになりました。

大きなミス、小さなミス、私たちに見えないところで何が起きるか分からないですし、いずれにしてもどのような調査を行なったのか、過程を見えるとありがたいのですが。

厚生年金増額対策まとめ厚生年金繰り下げ受給加給年金中高齢の特例60歳台前半の特例定時決定育児休業
退職改定任意単独被保険者高齢任意加入被保険者在職老齢年金3歳未満の養育特例
国民年金増額対策まとめ任意加入被保険者国民年金繰り下げ受給保険料免除制度国民年金基金時効の2年間
前払制度(保険料前納)会社員(厚生年金加入)付加年金第3号被保険者
年金Q&A公的年金制度と年金問題老後の年金生活の実態よくある年金の勘違い年金と税金
年金、ここが損得の分れ目国民年金の保険料国民年金保険料の免除厚生年金の保険料
年金の受給全般老齢基礎年金の受給老齢厚生年金の受給加給年金の受給寡婦年金
厚生年金保険への加入国民年金への加入年金の任意加入離婚時の年金分割
遺族厚生年金 遺族基礎年金中高齢寡婦加算在職老齢年金QA国民年金基金QA
年金の手続きその他年金受給者の手続き裁定請求書の書き方と留意点年金相談事例厚生年金の受給開始年齢
年金読書録(年金、年金生活、社会保障関連の本)消えた年金記録とは?プライバシーポリシー