ここ数年続く自費出版ブーム。しかし、「全国の書店にあなたの本が並びます」「とてもすばらしい作品です。感動しました。」などという心地よい言葉に誘われて契約したものの、実態はまったく違った・・・などというトラブルが急増しています。「話にあった全国の書店どころか地元の書店にだけしか本が並んでいない」「受け取った最初の数冊の他、きちんと印刷してくれているのかさえ確認できない」「勧誘が強引だった」など、国民生活センターへの自費出版に絡む相談件数は2002年に51件だったものが2006年には194件になるなど、年々増加傾向にあるのです。
そんな中、2008年1月7日には、自費出版大手の「新風舎」が東京地裁に民事再生法の適用を申請して事実上倒産(事業を継続しつつ再生を図る)しました。これは、自費出版契約を結んだ著者数名が損害賠償を求めて提訴したところ、「大きく報じられ発注が激減、資金繰りが悪化した(新風舎社長)」ということですが、「説明不足や、行き過ぎた営業もあったと思う(同)」と認めているように、その裏にはある種のトラブルが存在したようで・・・
ネットで出てくる新風舎トラブル
今回のニュースをきっかけに「新風舎」というキーワードでネット検索してみると・・・トラブルを匂わせるページが複数出てきました。例えば、
「新風舎」にだまされた 自費出版の巧妙手口
新風舎商法を考える会
なお、偶然見ていた11/27日放送のNHKクローズアップ現代「狙われる退職後の“夢”」においても自費出版被害が取り上げられていましたが、これは実名は出していなかったものの、登場人物は新風舎を訴えていた原告の方だった模様です。
事実関係については言った言わない、事実の誤認など、第3者には分からないものもあるのかもしれません。しかし、これだけトラブルがあるということは、自費出版における契約には、私たち自身も陥る落とし穴があるのかもしれません。(当然、新風舎固有の問題である可能性も捨て切れませんが・・・)
自費出版関連の専門家の声
2008年1月8日、クローズアップ2008というコーナーでこの問題を大きく取り上げていた毎日新聞には、各関係団体の方のコメントが掲載してありますが、参考になるものをいくつか引用させて頂きます。
■ NPO「自費出版ライブラリー」伊藤晋理事長「売れると見込まれた本は、出版社が通常の方法で出すに決まっている。自費出版の書店売りは『1部でも2部でも売れたらいい』程度のもの」
■ 「危ない!共同出版」の著者でNPO「リタイアメント情報センター」で自費出版トラブル相談室を開設している尾崎浩一さん「出版の素人が複数の出版社から見積もりを取り寄せたり、書店に並ぶかを事前に確認するのは困難」
■ 国民生活センター「出版社から作品がほめられても簡単に本が売れるとは限らない。契約金額など冷静に検討して欲しい」
通常ルートも戦略の時代
通常ルートのビジネス書の話ですが、最近ではネット書店等で限られた期間で1位を狙い、それを謳い文句にするという手法が用いられています。(「おかげさまでビジネス部門アマゾン1位!」など)
ネット書店のアマゾンでは売り上げ順位が出ますので、例えば5月1日から5月3日までの期間に集中的に売り上げるようにするのです。
アマゾンの場合アフィリエイトプログラムを持っているホームページやブログ、メルマガの運営者へ本を贈り、決まった期間に本を宣伝することを依頼します。(私も依頼を受けたことがあります)
もちろん単に宣伝をしても売上は伸びませんので、アマゾン出版キャンペーンと称して、その期間の購入でしか読めない小冊子やダウンロード用の電子ブック、もしくはその著者の出版記念セミナー参加権をプレゼント。
本を買う人は1500円程度の出費で魅力あるおまけがついて万々歳。著者にとってはアマゾンの順位が上がり万々歳。本を紹介した人は、アフィリエイト(紹介料)で儲かり万々歳。なるほどよくできた流れです。
今、本の売れない時代と言われます。
書店に並ぶことが最終目的ならば関係ありませんが、「売る」ことがメインであるならば、相当な覚悟をして望まなければならないことは確かなようです。