2008年6月20日の日刊ゲンダイには「『医療費将来推計』の大ウソ-14年前には141兆円の予測がいまじゃ56兆円と3分の1に」という記事が掲載されていました。
年金よりも難しいとされる国民医療費の将来予測ですが、その結果は医療費削減はもちろん、消費税増税論議の前提となるものですので、あまりに現実離れをした予測は困りものです。
過去の2025年国民医療費将来見通し
過去に公表された2025年の国民医療費の将来見通しは次のようになっています。
- 平成6年(1994年)3月公表『141兆円』・・・「社会保障に係る給付と負担の将来見通し(試算)(21世紀福祉ビジョン)」
- 平成9年(1997年)公表『104兆円』
- 平成12年(2000年)10月公表『81兆円』・・・「社会保障の給付と負担の見通し」
- 平成18年(2006年)1月公表『65兆円』・・・「社会保障の給付と負担の見通し」
なお、日刊ゲンダイの文中の「最新の2006年の推計では56兆円」については、「医療制度改革を実行すると56兆円まで医療費を抑制できる」という数字を持ってきているのだと思われますが、詳細は不明です。他に「自己負担金などを除く医療給付費として見ると56兆円になる」という話もあります。
(2006年公表の「社会保障の給付と負担の見通し」の2025年医療費推計『65兆円』でも97年の141兆円とは2倍以上もの差があります。)
国民医療費予測が大きくズレる理由
国民医療費の予測は人口の変動、経済成長率、個別の医療の値段を決める診療報酬の改定、医療技術の進歩など、先を読むことが難しい面もありますが、このうち経済成長率については、次のように予測値となっていました。
- 平成6年(1994年)3月公表『2000年度まで5%~4%、2001年度以降4%~3%』・・・「社会保障に係る給付と負担の将来見通し(試算)(21世紀福祉ビジョン)」
- 平成12年(2000年)10月公表『2010年度まで2.5%、2011年度以降2.0%』・・・「社会保障の給付と負担の見通し」
- 平成18年(2006年)1月公表『年平均2.0%、1.5%(2011年度まで年平均3.0%・2.1%、2012年度以降1.6%・1.3%)』・・・「社会保障の給付と負担の見通し」
1994年はバブル(通説1986年12月~1991年2月)崩壊後間もない時期ということで・・・日刊ゲンダイより『(将来推計を担当する厚労省保険局調査課は)「94年にはバブル経済の名残で、算出根拠の国民所得の伸びを高く見積もり過ぎた」』
最後に、日本医師会は2006年4月25日に行なわれた記者会見で、2025年の国民医療費推計値は49兆円程度になると示しています。