2008年(平成20年)8月22日に厚生労働省が公表した「平成19年度年金積立金運用報告書」によると、2007年度末における国民年金・厚生年金の年金積立金は、サブプライムローン等の影響による年金積立金の市場運用の収益悪化(前年度末比-5兆6千億円)に年金給付のための積立金取り崩しが加わり、2006年度末の149兆1337億円から10兆4852億円減少し、138兆6485億円となりました。
年金積立金額の推移(平成13年度~平成19年度)
2007年度は大きな落ち込みを見せた国民年金・厚生年金の年金積立金ですが、これまでの運用実績・積立金額はどのようなものだったのでしょうか。
「平成19年度年金積立金運用報告書」の20ページ、図2-11の「年金積立金の運用実績(承継資産の損益を含む場合)」から平成13年度~平成19年度の国民年金・厚生年金の年金積立金の額と収益の箇所を抜粋します。
※ | 平成13年度 | 平成14年度 | 平成15年度 | 平成16年度 |
資産額(年度末) 収益額 収益率 | 144兆3,315円 2兆7,787億円 1.94% | 141億5,415億円 2,360億円 0.17% | 145兆6,311億円 6兆8,714億円 4.90% | 147兆96,19億円 3兆9,588億円 2.73% |
※ | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 | 13~19年度合計 |
資産額(年度末) 収益額 収益率 | 150兆231億円 9兆8,344億円 6.83% | 149兆1,337億円 4兆5,669億円 3.10% | 138兆6,485億円 -5兆1,777億円 -3.53% | ※ 23兆684億円 2.26% |
2002年2月から2007年末頃までの実感なき好景気(「いざなぎ景気」を超えたことから一部には「いざなみ景気」と言われていますが)のためか、過去7年の年金積立金の推移を見てみると2007年度を除けば常にプラスの収益となっています。しかし、収益性の高さの比較ではノルウェーやカナダ、スウェーデンなど諸外国に劣ります。
日本版政府系ファンド(日本版SWF)
2008年7月3日ロイターによると、
「自民党の国家戦略本部のSWF(政府系ファンド)検討プロジェクトチーム(座長:山本有二前金融担当相)は3日、日本版SWFの設立を提言する中間報告を取りまとめた。運用原資は公的年金基金として、規模は10兆円とした。運用のプロを採用し、高い利回りの確保を目指す。(ここまで引用)」
現在年金積立金の運用を行なっているのは「年金積立金管理運用独立行政法人」ですが、人材の専門性などに問題があるため、もっと専門的な運用プロ集団組織が必要だということです。
- 組織の人員は30人規模
- 年間総経費は10億円~20億円(ファンドマネジャーの人件費・システム関連)
- 運用は国内債券67%で、残る33%を無制限とする
- 理事会を設置し、運用者を監視
- 投資期間5年間で、実績が出なければ解散とする
- 公的年金のうち、年金積立金管理運用独立行政法人から10兆円分だけ委託を受ける形とする。
関連:「プロ」運用のはずの投資信託が85%で値下がり
2008年8月9日日経新聞によれば、サブプライム問題が深刻になった2007年7月末から2008年7月末までの1年間で、545本の投資信託のうち全体の85%が基準価格(時価)を下回ったとのこと。(調査会社QUICK・QBR調べ)
掲載されているのはワースト15位までで、ワースト1位が-56.1%で15位が-32.7%。日興アセット、野村アセット、三菱UFJ投信、JPモルガンなど、一流会社の商品もランクイン。
これを見ると、「プロが運用してもダメな時はダメ」ということが言えそうですが、新しい年金運用の組織では、その辺安心してよいのでしょうか。
SWF創立検討チーム幹事、自由民主党の田村耕太郎参院議員は「万が一、損失が一時的に出ても、150兆円の運用の一部でしてとらえれば影響は軽い。10兆円から開始するので当面の年金の支払いには影響がないだろう」(同ロイター)としています。ただ、SWFが始まる前に早くも138兆円のうちの10兆円となってしまったのが・・・。