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図解:厚生年金の「消された年金」その2

2008年(平成20年)10月3日、社会保険庁は厚生年金の標準報酬月額の大幅な引き下げ(5等級以上の引き下げ)が「75万件」あることを明らかにしました。

また、その他にも過去6ヶ月以上さかのぼって標準報酬月額を引き下げたものが「53万3千件」、標準報酬月額の引き下げの同日、または翌日に厚生年金の資格を喪失したものが「15万6千件」あり、厚生年金記録の改ざんが疑われる総件数は100万件を超える可能性が出てきました。

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厚生年金の「消された年金」その2

厚生年金の「消された年金」その2

2008年9月18日、社会保険庁は、上記図の3つのケース(円)の重なり部分の「厚生年金記録の改ざんが濃厚」とされる件数が6万9千件であることを公表しました。

そして今回・・・「民主党は三つのケースの改ざん件数を、それぞれ明らかにするよう社保庁に迫った。同庁もようやく情報開示に応じ、舛添要一厚生労働相が三日の閣議後の記者会見で発表した。(日経新聞2008年10月4日号より引用)」ということで、前向きとは言えない形での情報開示となりました。(文中の「改ざん件数」は「改ざんが疑われる件数」を指しています。)

厚生年金記録の改ざんではない場合もある

「標準報酬月額の大幅な引き下げ」では、企業経営が厳しく給与の大幅カットが行われた場合や、女性が出産のために勤務スタイルを大きく変更したような場合。もしくは「過去にさかのぼっての標準報酬月額引下げ」では、事業主の多忙による届出遅れ、届出ミスなど事実に基づいた処理が行なわれた場合には改ざんではありませんので、今回公表された数字がすべて改ざんであるわけではありません。

「実数」は重複分を差し引く

3つのケースの延べ件数は144万件ですが、「過去6ヶ月以上にさかのぼって」+「標準報酬月額5等級以上の引き下げ」というように条件が重複する部分については、実数計算上はその分を差し引く必要があります。

ただ、社会保険庁は3条件の重複については6万9千件と公表しているものの、2条件の重複件数については、「調べていない。調べる予定もない。(年金保険課)」(読売新聞2008年10月4日)としています。

1986年3月オンライン化以前の厚生年金記録改ざん

コンピュータ記録がオンライン化された1986年3月より前の年金記録については、オンライン上での訂正処理の検索ができないこともあり、今回の調査では対象外とされました。

しかし、2008年9月22日現在の総務省年金記録確認第三者委員会における厚生年金記録改ざん認定事例64件のうち24件(約4割)が1986年(昭和61年)のオンライン化前のものと判明しています。(2008年10月7日、民主党山井和則衆院議員質問主意書に対する答弁書を政府が閣議決定)

オンライン化(1986年)後は1990年代のバブル崩壊があり、中小零細事業所など経営の厳しいところで厚生年金記録改ざんが行なわれた可能性がありますが、オンライン化前にも1970年代にオイルショックが・・・さらに、「社保庁職員の改ざんが問題になっているが、東京や大阪の事務所では昭和五十年代から有名だった。(日経新聞2008年10月7日1面特集記事…社保庁職員とOB40人の聞き取りから)」というような話もあることから、第三者委員会の途中結果(改ざん認定の4割がオンライン化前のもの)と考え合わせると、オンライン化の前後での改ざんの発生数にはそれほど大きな開きはないような気がします。

なお、当答弁書ではオンライン化前の改ざんについては「オンラインシステム稼動前の記録は被保険者名簿で管理されており、訂正処理は手書きで行なわなければならず、職員が明確に証拠が残る形で不正な処理を行なうことは一般的には考えにくい」としています。

調査対象外の厚生年金の加入期間の短縮

社会保険庁が2008年9月18日に「6万9千件」を公表したとき、「総務省の年金記録確認第三者委員会がこれまでに認定した改ざんについて社保庁が調べたところ、加入期間を実際より短縮する手口が約7割を占め、標準報酬月額を引き下げる手口は3割弱に過ぎない。(読売新聞2008年9月19日) 」ということで、実際の「加入期間の短縮」の件数は「標準報酬月額引き下げ」の件数を十分に上回ることも予想されるわけですが、「6万9千件」公表時も今回も、「厚生年金の加入期間の短縮」については調査の対象外としています。

消された年金である可能性のある厚生年金記録の総件数は?

ここまで公表されている各種数値と勝手な推測をもとにして、消された年金総件数を計算してみようと思います。前提は・・・

  • 1:今回公表された3つのケースの実件数を漠然と100万件とします。(「144万件-重複件数」ですが重複数は未知数)
  • 2:「オンライン化後」と「オンライン化前」の改ざん件数の割合を「6:4」とします。(第三者委員会の認定割合より)
  • 3;「標準報酬月額引き下げ」と「厚生年金加入期間の短縮」の割り合いを「3:7」とします。(第三者委員会の認定割合より)

今、「オンライン化後」における「標準報酬月額引下げ(5等級以上引き下げ他3ケース)」の件数がわかっているので、ここに「オンライン化前」の件数と「厚生年金加入期間の短縮」の件数を合わせて消された年金の総件数を計算します。

まず2より、オンライン化前後の総件数を知るためにはオンライン化後100万件を1.66倍すればよいので166万件となります。

次に3より、「厚生年金加入期間の短縮」の件数を知るためには2で出した「標準報酬月額引き下げ(オンライン化前後)」の166万件を3.33倍すればよいので166万×3.33=約552万件??

以上前提のとり方も計算も思いつきの域を出ませんが・・・

当然ながら「標準報酬月額引き下げが4等級以下」や「さかのぼり5ヶ月以内における標準報酬月額引き下げ」を入れると計算の結果はそれだけ大きなものとなります。

果たして本当のところは?

『「仕事」として定着』していた年金改ざん

2008年11月28日、厚生労働省直属の厚生年金記録の改ざん調査委員会は、その調査報告書を公表。社会保険庁職員の改ざんに関する証言は次のようなものでした。

『保険料率が記載された計算書を用いて、改ざんで帳消しになる滞納保険料を手計算していた。』『事業主から白紙の届け出書に、事前に社判と代表印を押印させて取得しておき、事後的に徴収課員が届け出書を代筆する例があった。』『改ざんの届け出について、なんとなくおかしいと思っても見逃していた。』『1995年当時、改ざんは「事務処理の一環」として行われていた。』『年度内に滞納件数を減少させなければならないプレッシャーから、2~4月には改ざんが増加する。』

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