「遺族年金」は有名ですが、「寡夫年金」というのが何なのかというのを知らない人は多いです。一種の遺族年金なのですが、ご存知でしたか?
寡婦年金は国民年金の第1号被保険者の年金期間を持つ夫が死亡した場合、要件を満たせば妻に対して年金が支給されるというものです。
寡婦年金の受給要件
- 死亡した夫は、第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせて25年以上の年金期間があること。
- 老齢年金や障害年金等を受給したことがないこと。
寡婦年金の妻側の要件
- 夫婦の婚姻期間は10年以上あること。
- 夫が死亡した時、夫によって生計を維持されていたこと。
- 夫死亡当時65歳未満であること。
- 遺族基礎年金を受け取る権利がないこと。
寡婦年金の支給
寡婦年金は、妻が60歳から65歳までの間支給されます。
年金額は夫が受け取れたであろう老齢基礎年金の4分の3の年金額ですが、これは第1号被保険者の分だけが対象です。
支給要件がわかりにくいこともありますが、自営業の妻の方にとっては受給できる可能性は決して低くはない年金です。ちなみに「寡婦」は未亡人のことですが、妻が亡くなったときの「寡夫」は対象ではありません。
寡婦年金と遺族基礎年金
寡婦年金と遺族基礎年金を同時に受給することはできませんが、遺族基礎年金を受給していた人であっても寡婦年金を受給することはできます。例えば夫が亡くなって遺族基礎年金をもらっていた寡婦が、55歳で子供が18歳に達し遺族基礎年金がもらえなくなったとします。その場合、再婚などをせずに要件を満たしていれば、60歳から65歳まで寡婦年金がもらえることになります。
寡婦年金と死亡一時金
寡婦年金と死亡一時金は選択です。寡婦年金をもらえる年齢の人があえて死亡一時金をもらうことはないでしょうが、60歳までまだ年月があるような方は死亡一時金を選択することになるでしょう。それぞれの人生ですので、どちらがよいとは一概には言えません。
寡婦年金と夫の付加年金
亡くなった夫が国民年金に付加年金をつけていたとしても、寡婦年金に対して付加年金は加算されません。ちなみに、死亡一時金には付加年金の分が上積みになりますが、それでも最高8,500円だけですので、付加年金は亡くなったときは無くなるものと思ってもよいかもしれません。
寡婦年金の失権
寡婦年金の受給権は次の事項に該当したときに消滅します。
- 65歳になった時
- 死亡した時
- 婚姻(事実婚を含む)をした時
- 養子(事実上の養子も含む)となった時(祖父母など、直系血族や直系姻族の養子となった時は失権しません)
- 繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給したとき
1は、65歳になれば妻本人の老齢基礎年金が支給されますので、バトンタッチということ。5は特に注意が必要で、寡婦年金が支給されている人が老齢基礎年金の繰上げを請求したときはもちろん、寡婦年金がもらえるのを知らないで老齢基礎年金を繰り上げ請求した人も、寡婦年金の受給権を失権します。
一般に寡婦年金の認知度は高くはないので、「60歳になったら年金についていろいろな選択肢があるかもしれない」ということと「老齢基礎年金の繰り上げ請求はいろいろデメリットがありそう」ということだけを覚えておくと、年金のミスは少なくなると思います。