金額は少ないながら多くの方が受け取れる可能性のある国民年金の死亡一時金。遺族補償的な意味合いよりも、掛け捨て防止的な意味合いが強い給付です。
国民年金の死亡一時金の概要
国民年金の死亡一時金は、保険料を納付した人が死亡した時に、その遺族に支給されるものですが、国民年金の第1号被保険者として掛けてきた保険料が無駄にならないようにするため、その掛けた国民年金保険料の月数に応じて、支給される死亡一時金の額が決まっております。死亡一時金の額は、12万円から32万円までとなっています。
死亡一時金の支給要件
国民年金の死亡一時金は、死亡した人の要件と、遺族の要件の両者共にすべての要件を満たしたときに支給されます。支給されるのは妻に限りません。
【 死亡した人の要件 】
- 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの国民年金第1号被保険者としての被保険者期間にかかる保険料納付済期間の月数と保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数とを合算した月数が36月以上あること。
- 老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けたことがないこと。
第1号被保険者と書いてあるところは、国民年金に任意加入し、任意加入被保険者として国民年金保険料を納めた期間も含まれます。1は、「前月まで」というところは国民年金の寡婦年金と同じです。また、全額免除期間は入っていません。2は、「受けたことがないこと」ということで、受給権を持つだけなら支給されます。ここは寡婦年金の場合は支給されなくなるところです。また、旧法の老齢年金、障害年金等も受けていては支給されません。
【 遺族の要件 】
- 遺族基礎年金を受け取ることができないこと
- (例外)子が遺族基礎年金の受給権者であるとき
1が大原則ですし、2の例外でも結果的に遺族基礎年金は受け取れないということを言っています。
1は、まず妻または子に遺族基礎年金が支給されるときは、死亡一時金は支給されないが、死亡日の属する月に遺族基礎年金の受給権が消滅した時は、死亡一時金が支給されます。たとえば夫が亡くなったときに16歳だった娘が嫁に行くことになり、遺族基礎年金の受給権は発生しつつも結果的に1月分も遺族基礎年金を受け取れない場合など、このようなときは国民年金の死亡一時金を出すということです。
また、1としてもう一つ、死亡したものの死亡日において胎児であった子が生まれ、遺族基礎年金の受給権が発生した時は、国民年金の死亡一時金は支給されないが、その胎児であった子が生まれた日の属する月に、遺族基礎年金の受給権が消滅した時は、国民年金の死亡一時金が支給されます。これも本来ならば遺族基礎年金の受給権が発生するが、子が誕生してすぐに亡くなってしまうなどの不幸によって結果的に遺族基礎年金が受けられない場合は、死亡一時金を支給するということです。
2の例外は、死亡したものの子が遺族基礎年金の受給権を取得したが、そのこと生計を同じくするその子の父または母があることによって遺族基礎年金の支給が停止される場合に、死亡したものの配偶者で、その者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていたものに死亡一時金が支給されます。代表的なケースは妻が亡くなり、子と父だけになった場合です。子が18歳未満ならば国民年金の遺族基礎年金の受給権が発生するものの、整形を同じくする父がいるために遺族基礎年金は支給停止になります。そこで、死亡したものの配偶者である夫(子にとっては父)に死亡一時金が支給されるのです。
死亡一時金をもらえる遺族の範囲
国民年金の死亡一時金を受けることができる遺族は、死亡したものの
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
であって、死亡の当時、その者と生計を同じくしていたものです。なお、死亡一時金を受けられる順位は上記の通りで、同順位の人が複数いるときは、その1人がした死亡一時金の請求は全員のため、その全額をしたものとみなされます。なお、死亡一時金の受給権者が複数いるときでも、死亡一時金の額は、1人の受給権者のときの金額と変わりありません。
死亡一時金の額
死亡一時金の額は、死亡日の属する月の前月までの国民年金第1号被保険者としての被保険者期間にかかる死亡日の前日における保険料納付済期間の月数と、保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数とを合算した月数に応じて、それぞれ次の額となります。(つまり、保険料納付の実期間に相当します。保険料半額免除期間なら半月分として計算します。)
- 36月以上180月未満=120,000円
- 180月以上240月未満=145,000円
- 240月以上300月未満=170,000円
- 300月以上360月未満=220,000円
- 360月以上420月未満=270,000円
- 420月以上=320,000円
なお、死亡一時金には物価スライドは適用されません。
死亡一時金の裁定請求
死亡一時金を請求するときには、市区町村に対して「国民年金寡婦年金裁定請求書」を提出して裁定請求を行ないます。
死亡一時金と国民年金の付加年金
国民年金同士の死亡一時金と付加年金。一応付加年金も掛け捨て防止的観点から、国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が3年以上あるときは8,500円が死亡一時金に加算されます。
死亡一時金と寡婦年金
国民年金の死亡一時金が支給されるときに、死亡したものの妻に対して寡婦年金の受給権も発生することがあります。この場合は、両方を行うということはなく、受給権者の選択で死亡一時金か寡婦年金科のいずれか一方の給付が行われ、他方は支給されなくなります。
ですので、もらえる額で言えば60歳まで独り身を通すなら寡婦年金が有利で、その前に再婚するのなた死亡一時金が有利ということがいえます。