自分の年金記録を確認していく中で、思わぬ厚生年金の記録が見つかることがあります。しかし、会社を退職したときにもらうお金の中に、脱退手当金として年金を清算したものが含まれていた場合、その年金加入期間は年金額には反映されません。過去脱退手当金を受け取ったのは女性に多く、悔しい思いをしている人は大勢いると思われます。
脱退手当金の概要
当サイト関連ページ:「脱退手当金とは?」
昭和36年まで、厚生年金は厚生年金で20年加入していなければ年金の受給権は得られませんでした。そして昭和36年から昭和61年までは国民年金と併せて20年でもよしとされましたが、その期間、夫が会社員の専業主婦は国民年金に任意加入でした。
そのため、結婚してからは国民年金に入らないという女性も多く、結果的にOLをしていた厚生年金の加入期間は掛け捨てになってしまう可能性は高いものでした。
そのため当時は女性が結婚退職した場合、厚生年金を脱退手当金で清算し、一時金で払い戻すということが自然と行なわれていましたし、ある意味合理的な考え方でした。
脱退手当金を取り巻く状況が一変した昭和61年
昭和61年から、夫が会社員の専業主婦は、タダで国民年金に加入できるようになりました(第3号被保険者)。今まで任意加入で加入していなかった人も、任意加入被保険者として国民年金の保険料を払っていた人も、同じくタダに。
今までの専業主婦は、任意加入で保険料を払うつもりがないから脱退手当金の道を選んできましたが、結婚退社後にタダで国民年金に加入できるのでしたら何も清算する必要はありません。
自分の厚生年金加入期間と国民年金の加入期間を合わせて十分に受給資格を得ることができるようになったのです。そして脱退手当金はその役割が終わり、廃止されることになりました。(原則)
もらってしまった脱退手当金は?
「そんなことなら脱退手当金をもらわなかった」そんな声が聞こえてきそうですが、過去の脱退手当金の計算対象となった年金加入期間は、年金額に反映することはありません。
その期間は年金の受給資格期間にカウントされるだけです。
女性は脱退手当金の要件が軽かった
脱退手当金の受給要件は原則厚生年金加入5年以上ですが、女性に限っては厚生年金加入2年以上の時期があったり、年齢要件がなかったりと、制度としても脱退手当金の受給を奨励していたと思えるものでした。
脱退手当金の歴史的変遷は次の通りです
【昭和17年】
脱退手当金制度創設
3年以上の被保険者期間を有する者が死亡又は資格喪失した場合
【昭和23年】
脱退手当金の改正
原則:被保険者期間が5年以上20年未満の者が50歳を超えた時。
例外:死亡の場合及び6月以上の被保険者期間を有する女性が結婚又は出産による厚生年金脱退の際は年齢制限なし。
【昭和29年】
脱退手当金の改正
男子は被保険者期間5年以上かつ55歳以上、女子は被保険者期間2年以上で年齢制限なしとした。
【昭和36年】
脱退手当金の改正
被保険者期間5年以上の者で老齢年金の支給要件を満たすことができない者が、60歳に達した後に被保険者の資格を喪失した場合。(通算老齢年金の受給権を取得している場合は支給しない)
【昭和40年】
脱退手当金の改正
短期加入女子の脱退手当金制度の復活
短期加入女子の脱退手当金について改正後6年間の経過措置として昭和29年の規定(女子について被保険者期間2年以上、年齢制限なし)が復活。
以後、昭和53年5月まで2回(昭和46年・昭和48年)にわたって特例を延長。
(それ以降は本則どおり昭和36年の要件(5年以上60歳)で支給。)
【昭和60年】
脱退手当金の廃止