平成19年4月から、厚生年金の適用する会社で働く一定の70歳以上の従業員にも、65歳以降の人と同様の在職老齢年金のしくみが適用されるようになりました。これにより、健康保険は適用のまま、厚生年金は保険料は徴収しないものの、収入の多い人は在職老齢年金のしくみによって年金がカットされることになります。それと同時に、70歳以上の従業員を雇用する会社としては、対象者に対する一定の手続きが必要となりました。
70歳以上で年金手続きが必要となる対象者
今回の改正により、一定の70歳以上の従業員に掛かる年金の手続きが必要となりましたが、その対象者は次のすべてを満たした人とされています。
- 生年月日が昭和12年4月2日以降であって、70歳以上である人。(すなわち平成19年4月1日時点において70歳以上の方は対象外。)
- 会社が厚生年金の適用となっており、勤務日数および勤務時間がそれぞれ当該事業場で働く一般の従業員の概ね4分の3以上であること。(70歳未満であれば厚生年金の適用となる社員、役員のこと。)
- 過去に厚生年金保険の被保険者期間がある人。(新たに入社した人が、過去の履歴において1月も厚生年金に加入したことがない人であれば、対象外。)
70歳以上の従業員を雇用する場合の手続き(届出)書類
対象者である70歳以上の従業員が入社、退社等ケースごとに必要となる手続き(届出)書類は次の通りです。
70歳以上の対象者が新たに入社した時
「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を5日以内に提出する。
同時に「健康保険被保険者資格取得届」も提出する。
70歳以上の対象者が70歳以上になり引続き雇用する時
「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を5日以内に提出する。
同時に「厚生年金保険被保険者資格喪失届」も提出する。
※被保険者でなくなるから「被用者」該当。
70歳以上の対象者の報酬に変更、または賞与の支払があった時
「厚生年金保険70歳以上被用者月額変更・賞与支払届」を提出する。
期限は月額変更届はすみやかに、賞与支払届は5日以内に提出する。
7月1日に70歳以上の対象者を雇用している時
「厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎届」を提出する。
期限は毎年7月1日から10日までの間
対象者が育児休業等を終えて職場復帰し、報酬を変更した時
「厚生年金保険70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出する。
期限はすみやかに。
対象者が退職した時
「厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を5日以内に提出する。
同時に「健康保険被保険者資格喪失届」も提出する。
対象者が2箇所以上の会社等に勤務することとなった時
「厚生年金保険70歳以上被用者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する。
期限は10日以内。
届出をする社会保険事務所は、被用者が選択した事業所を管轄する社会保険事務所。
適用となる在職老齢年金は?
70歳以上の対象者に適用される在職老齢年金は、65歳以上の人が適用になる在職老齢年金と同じしくみですので、「老齢厚生年金の基本月額、プラス総報酬月額相当額」、噛みくだいて言えば「年金の2階部分にある厚生年金、プラス年収の12分の1」が48万円を超えた時、その超えた分の2分の1の金額を年金(2階部分の厚生年金)からカットしますよ、ということです。
簡単に言えば、国民年金や企業年金を除いた部分と、月収が合わせて48万円もないという人は、年金がカットされないということになります。ただ、その時点では年金がカットされないかもしれませんが、給与の変動によってはカットされる水準になるかもしれませんので、このような年金カットをされなさそうな70歳以上の人も、標準報酬月額や標準賞与額の届出が必要なのです。