過去に勤めていた厚生年金の年金記録がない場合、その原因は国のずさんな管理ばかりではありません。本人の勘違い、または会社側の手続きミス等も原因となっているケースがあります。
法律どおりとは限らない厚生年金の加入歴
厚生年金の加入記録を残すには、厚生年金の適用を受けて保険料を納めているということが必要です。「法律では確かに厚生年金の加入であるはずなので、厚生年金の年金記録がないのはおかしい」といっても、大前提の保険料を納めた実績がなければ、そもそも厚生年金に加入していなかったということになります。
会社自体が厚生年金に加入してなかった
本来厚生年金の加入義務のある会社なのに、厚生年金の加入手続きをしていなかった場合は、そこで正社員として働いていても厚生年金には加入となりません。もしくは、元々厚生年金の加入義務のない事業所で正社員として働く場合も同様です。
なお、それにも関わらず、給料から厚生年金保険料の従業員負担分が控除されていた場合の取り扱いについては、現在のところ救済されるということにはなっていません。(2007年10月現在:以降法改正等に注目するところ)
本人が厚生年金に加入しない働き方だった
例えば正社員として働く場合と請負として働く場合において、その働き方がまったく同じであるのならば、厳密に言えばこれを正社員と請負で分けることはおかしな話です。しかし、実際は社会保険料の節約対策その他事業主としての使用者責任の回避等の狙いがあり、このような取扱とすることはままある話です。
そして、本人がその区別をあまり意識することなく、てっきり正社員のつもりで働いていたところ、実は請負であって厚生年金に加入していなかった・・・そのようなこともあるのです。
「いや、同期で同じように働いていた佐藤さんは厚生年金をもらっているぞ」と言う場合でも、佐藤さんは正社員で本人は請負として働いていた可能性もあります。実際、とあるタクシー会社では、「勤務Aは正社員、勤務Bは請負で手取りが若干多い」と言うような形で同じ働き方でも選択させる方策を採っていたところがあるのです。
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入社時の厚生年金の加入期間にならないケース
期間の定めのない正社員として採用されたにも関わらず、本来厚生年金に加入させなければならない試用期間を厚生年金に加入させなかった場合には、この期間が厚生年金の未加入期間となってしまいます。
類似のケースでは、勤務時間、勤務日数など正社員とおなじような勤務形態で正社員の予定で採用されたのに、しばらくはアルバイトとして働かされ、その後正社員になってはじめて厚生年金の加入手続きをするケースも同様です。これも本来ならば最初から厚生年金の加入としなければならないところ、会社の意図か間違いかは別として、実質的に厚生年金の未加入期間となります。
退社時の厚生年金に入れてくれないケース
例えば3月末で退社するという時に、通常なら3月31日を退社日にします。すると、厚生年金保険の資格喪失日は翌日の4月1日となりますので、3月は厚生年金の加入期間となるのです。
しかし、保険料を少しでも節約したい会社としては、1か月分でも保険料を浮かせたいために、3月30日を退社日にして届出をするのです。すると、資格喪失日は3月31日となりますので、3月は厚生年金の加入期間とはならず、2月までが厚生年金の加入期間となります。
この方法によって、3月分は厚生年金保険の本人負担と会社負担の両方が負担なしとなるわけですが、ひどい会社になりますと、3月分の厚生年金保険料の本人負担分まで給与から天引きしてしまうところもあります。(もちろん犯罪行為です)
また、有給休暇との関係でも手続きミスが生じます。たとえば3月に退社する予定の人の場合、有給休暇がたっぷりたまっているので3月25日から4月10日まで有給を消化しようとするとします。ここで、退職日を3月24日などとしてしまっては間違いです。有給を使い切る4月10日を退職日として届け、厚生年金の加入期間は3月分までとしなければなりません。(退職日が3月24日にした場合は厚生年金の加入期間は2月分までとなります)
転勤時の手続きミスのケース
社内に在籍したまま各地を転勤する場合など、本来なら旧事業所管轄の社会保険事務所で一度資格喪失の手続きをして、新たに勤める事業所管轄の社会保険事務所で再度加入手続きを行います。(社会保険を本社で一括加入していない場合)
もし転勤先での被保険者資格の再取得手続きをしていなかった場合、その分が手続きもれとなってしまい、厚生年金に未加入となってしまうこともあります。