10年前2868万円→5年前2499万円→2008年1月1日現在2075万円。
今、「退職金」が予想以上のスピードで減り続けています。
2008年10月7日に厚生労働省が公表した「2008年就労条件総合調査(※1)」によると、大卒者(※2)で昨年定年退職(※3)したサラリーマンの退職金(※4)は2075万円でした。
※1 就労条件総合調査:全国の従業員30人以上の民間企業5937社から抽出し、2008年1月1日現在の状況を尋ねたもの。有効回答数は4047社。
※2 大卒者:ここでは、管理・事務・技術職
※3 定年退職:ここでは、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職
※4 退職金:一時金や年金
その減少金額は、
5年前からの比較では424万円、
10年前からの比較では793万円。
「5年間で400万円減少」というペースを維持すると、
5年後には大学卒で1600万円を下回る計算になりますが、
サブプライム金融危機から経済危機への波及の度合いによっては
それをさらに上回る暴落も十分に考えられます。
すでに退職金をもらい終えた世代も
かなり厳しい年金生活となっている現状ですが、
これから年金生活を迎える後世代の人々は、
それすら幸せと思えるほどの苦しい暮らしが・・・?
高校卒の退職金はさらに厳しい
大学卒でもかなり厳しい退職金相場ですが、同じ条件で見たときの高校卒2008年1月1日現在の退職金金額は1690万円となっています。大学卒2075万円との差は385万円です。
また、中学卒は「2008年就労条件総合調査」においては現業職のデータしか掲載されていませんが、上記と同条件で見ると1111万円となっており、かなり厳しい退職金事情となっていることがわかります。
小規模企業の退職金はさらに厳しい
「就労条件総合調査」は従業員30人以上の企業の調査ですが、30人未満の企業で働く人は、より少ない退職金を覚悟しなければならないかもしれません。
「平成18年度中小企業の賃金・退職金事情」(東京都産業労働局)によれば、平成18年7月31日時点の企業規模別モデル退職金(一時金と年金の併用)は次のようになっています。(大学卒・定年退職。その他諸条件は省略。)
- 10人~49人=1471万円
- 50人~99人=1549万円
- 100人~299人=1606万円
あくまで、企業規模による退職金の違いを見るためだけの参考データですが、規模の小さな企業ほど退職金が少ないことはわかります。
「就労条件総合調査」では平均を上げる可能性の高い大企業のデータが入り、一方で平均を下げる可能性の高い29人以下の企業は調査から外していることから、実際に平均を考える際には多少数字を割り引いて考えたほうがよいのかもしれません。
小規模企業で働く人の数
それでは、小規模企業で働く人の数はどのくらいなのでしょうか?
2008年度版中小企業白書の付属統計資料「3表・産業別規模別従業者数(民営、2006年)」の非1次産業計を一つの目安として見てみると、小規模企業(常用雇用者20人以下(卸売業、小売業、飲食店、サービス業は5人以下)の企業)の従業員数(会社の常用雇用者数と個人事業所の従業者総数を合算)、およびその全体割合は次のようになっています。
- 小規模企業:929万3107人=23.2%
- 中小企業(小規模企業含む):2783万5550人=69.4%
- 大企業:1229万1430人=30.6%
- 合計:4012万6980人=100%
企業の数でいえば小規模企業は圧倒的に多い(2008年中小企業白書 1表・産業別規模別事業所・企業数(民営)の企業ベースの非1次産業で87%)のですが、従業員人数では23.2%・・・それでも決して少なくはありません。
※中小企業:常用雇用者300人以下(卸売業、サービス業は100人以下、小売業、飲食店は50人以下)、または資本金3億円以下(卸売業は1億円以下、小売業、飲食店、サービス業は5,000万円以下)の会社及び従業者総数300人以下(卸売業、サービス業は100人以下、小売業、飲食店は50人以下)の個人事業者。
なぜ退職金相場が暴落しているのか?
ここ5年10年の退職金相場暴落の原因としては、次のようなことが指摘されています。
- 転職する人が増え、勤続年数が短くなった
- 退職金の準備金の運用成績が悪化した
- 景気・競争環境の変化等により退職金の計算ベースとなる基本給が減った
1000万円、年金生活で何年持つ?
ここまで、少なくとも20年以上勤務での退職金を見てきましたが、実際に1社に20年以上勤務する人の割合はどれほどのものなのでしょうか?
たとえ、20年以上でも、就労条件総合調査の大学卒データ、勤続年数20年~24年かつ45歳以上の定年退職の場合には20年以上平均の2075万円の半分以下の998万円しか退職金を受け取れません。
ここでは1000万円に着目して、その金額が老後の暮らしで何年持つものなのかを考えてみます。
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(平成16年)の調査結果によると、夫婦2人が老後に暮らしていくのに必要なお金は、最低でも月に24.2万円ということですので、1000万円を取り崩す生活ならば41月分、3年5ヶ月分にしかなりません。(関連:ゆとりある老後に必要な生活費、最低限必要な生活費はいくら? 老後の生活における、収入と消費金額は?)
もちろん、実際には年金収入がありますので生活費すべてを貯蓄の取り崩しでまかなう必要はないのですが、物価上昇に完全に連動しないマクロ経済スライドにより、もらえる年金額はじわりじわりと減額されていきますので油断はできません。(関連:国民年金と厚生年金の平均受給金額はいくら?)
また、金融危機による年金積立金の運用損をはじめ、少子化の予想以上の進行や経済の悪化による保険料収入の減少などにより、年金受給開始年齢が67歳ないしは70歳に引き上げられる可能性も小さくないことから、後世代の人ほど年金生活のリスクは高くなるものと思われます。
特に、人口ボリュームがあり、受験難、就職難と不遇の時代を生きてきた団塊ジュニア世代が年金生活を向かえるときが問題です。
まず「退職金」という制度自体が残っているか・・・もし退職金制度が存在していても団塊ジュニア世代は比較的非正規雇用の多いため、多くの人が退職金制度の恩恵を十分に受けられないと思われます。
年金受給開始年齢は・・・昭和16年生まれから昭和36年生まれまで20年かけて60歳→65歳にしたことを考えると、団塊ジュニア世代(昭和46年から昭和49年生まれ)が年金をもらう前に10年かけて65歳→67歳ないしは70歳にすることも十分にあり得ます。
果たして後世代の年金生活はどうなってしまうのでしょうか?