平成19年11月21日の第6回社会保障審議会年金部会の資料4「厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人の基礎年金額を含む)の見通し【生年度別、65歳時点】-暫定試算(厚生労働省サイトPDFファイル)」には、(生年月日ごとに)将来向かえる65歳時点の年金額と所得代替率が表に記されています。
前提は経済が好調な時期と不調な時期の2つの時期、そして出生率の高・中・低の計6通りに分けられ、表中の数字は年金をもらうのが将来になるほど年金額が大きくなるという結果になっています。これは、物価の上昇に伴う名目的な年金額の上昇ということで、生活水準という点で言えばカッコ内に記されている所得代替率の方が将来の年金のレベルを想像しやすいような気がします。
そこで、将来の見通しである所得代替率を、「将来」の現役世代の所得ではなく「現在」の所得で計算するとどうなるかをざっくり計算してみようと思います。
所得代替率
所得代替率とは、現役世代の人たちが賃金としてもらう給与・賞与の所得合計に対する年金額の割合のことを言います。
政府は、年金100年安心プランなどでは所得代替率が「50%」を超えることをアピールしていました。しかし、年金支給開始時点で50%を超える所得代替率であっても時間の経過と共に50%を下ることがあること、および現在の若い人は、将来の支給開始時点でさえも50%を上回らないことが濃厚であるために、若い人を中心に不満の声も聞かれます。
また、ここで言う年金が夫が40年間サラリーマンで平均所得を得て、その期間すべて妻がいる(専業主婦)としたときの『夫』の厚生年金+国民年金(基礎年金)+『妻』の国民年金(基礎年金)を合計したものだという、あまりにも理想的なケースを年金のモデルとしていることにも、若干の疑問が残ります。
厚生年金の標準的年金額を現在で言うと・・・
例えば、昭和16年度生まれの65歳の人の平成18年度の65歳到達時点でのモデルとする年金額は22.7万円で所得代替率が59.7%です。
これを基準とすると、227.000円÷59.7%=およそ『38万円』・・・これがこの表で使っている現役世代が現在もらっている平均所得になります。
よって、38万円を表のそれぞれの所得代替率で掛ければ「現在で言えばいくらなのか」という数字が出ます。
なお、表の経済前提の「経済前提基本ケース(最近の経済動向を踏まえた設定)」は『経済高成長』、「経済前提基本ケース(平成13~14年頃の経済動向を踏まえた設定)」は『経済低成長』とあらわすことにし、さらに出生率の高かった場合については無視することとします。(今まで厚生労働省の予測において出生率が高位に推移したことがなく、良くて中位どまりだと思われるため。)
また、現在値の計算結果は1,000円未満四捨五入です。
昭和61年度(1986)生まれ
※平成18(2006)年度の年齢=20歳
※65歳到達年度=平成63年度(2051)
【経済高成長】
- 出生率中位:所得代替率51.6%=現在なら19.6万円(65歳時点37.3万円)
- 出生率低位:所得代替率49.4%=現在なら18.8万円(65歳時点35.8万円)
【経済低成長】
- 出生率中位:所得代替率46.9%=現在なら17.8万円(65歳時点29.1万円)
- 出生率低位:所得代替率43,9%=現在なら16.7万円(65歳時点27.3万円)
昭和51年度(1976)生まれ
※平成18(2006)年度の年齢=30歳
※65歳到達年度=平成53年度(2041)
【経済高成長】
- 出生率中位:所得代替率51.6%=現在なら19.6万円(65歳時点32.2万円)
- 出生率低位:所得代替率49.4%=現在なら18.8万円(65歳時点30.9万円)
【経済低成長】
- 出生率中位:所得代替率46.9%=現在なら17.8万円(65歳時点26.1万円)
- 出生率低位:所得代替率43,9%=現在なら16.7万円(65歳時点24.5万円)
昭和41年度(1966)生まれ
※平成18(2006)年度の年齢=40歳
※65歳到達年度=平成43年度(2031)
【経済高成長】
- 出生率中位:所得代替率51.6%=現在なら19.6万円(65歳時点27.8万円)
- 出生率低位:所得代替率49.4%=現在なら18.8万円(65歳時点26.6万円)
【経済低成長】
- 出生率中位:所得代替率48.1%=現在なら18.3万円(65歳時点24.1万円)
- 出生率低位:所得代替率47.2%=現在なら17.9万円(65歳時点23.6万円)
昭和31年度(1956)生まれ
※平成18(2006)年度の年齢=50歳
※65歳到達年度=平成33年度(2021)
【経済高成長】
- 出生率中位:所得代替率52.7%=現在なら20.0万円(65歳時点24.5万円)
- 出生率低位:所得代替率51.9%=現在なら19.7万円(65歳時点24.2万円)
【経済低成長】
- 出生率中位:所得代替率52.2%=現在なら19.8万円(65歳時点23.4万円)
- 出生率中位:所得代替率52.2%=現在なら19.8万円(65歳時点23.4万円)
昭和21年度(1946)生まれ
※平成18(2006)年度の年齢=60歳
※65歳到達年度=平成23年度(2011)
【経済高成長】
- 出生率中位:所得代替率58.1%=現在なら22.1万円(65歳時点23.5万円)
- 出生率中位:所得代替率58.1%=現在なら22.1万円(65歳時点23.5万円)
【経済低成長】
- 出生率中位:所得代替率58.2%=現在なら22.1万円(65歳時点23.5万円)
- 出生率中位:所得代替率58.2%=現在なら22.1万円(65歳時点23.5万円)
昭和16年度(1941)生まれ
※平成18(2006)年度の年齢=65歳
※65歳到達年度=平成18年度(2006)
【経済高成長】
- 出生率中位:所得代替率59.7%=65歳時点22.7万円
- 出生率中位:所得代替率59.7%=65歳時点22.7万円
【経済低成長】
- 出生率中位:所得代替率59.7%=65歳時点22.7万円
- 出生率中位:所得代替率59.7%=65歳時点22.7万円
平均年収600万円は夢物語に!?
モデル年金においては、現役世代の平均年収は600万円に届かないくらいの金額で考えられていますが、非正規雇用で働く若い世代の人たちにとっては、その金額は平均どころか、生涯のピーク期においても手が届かないものとなりつつあります。
昇給もボーナスもない、時給1000円で働くひとならば、1日8時間、年間365日フルで働いても年収300万円にも届きません。(1000円×8時間×365日=292万円)
今後、現役の数が減少する上に1人当りの賃金も減少。
雇用対策や少子化対策など、年金の支え手に対する対策に本腰を入れなければ、いよいよ年金も危なくなるような気がします。