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年金の『甘い経済前提』2009年当時の批判発言禄

運用利回り賃金上昇率物価上昇率
2009年 財政検証(※1)4.1%2.5%1.0%
2012年 民主党試算(※2)(※3)4.1%2.5%1.0%

※1:2009年(平成21年) 財政検証
平成21年財政検証結果(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/
nenkin/zaisei-kensyo/dl/hontai.pdf

5ページの経済中位のケースの数値。(PDF:448.1KB)

※2:2012年 民主党試算
新制度の財政試算のイメージ(暫定版)
http://www.dpj.or.jp/download/6003.pdf

2012年2月10日公表。経済前提は1ページ下部に記載。(PDF:582KB)

※3:「民主党の試算」は、一応、政府・民主党ともに非公式であり、民主党調査会が厚生労働省に計算させた独自の試算ということにされています。しかし、2012年3月5日の衆議院予算委員会第五分科会の応答で明らかにされたところによると、自民党の河野太朗議員が、確定済みの直近のデータ(足元の現実の数字)も含めて試算するよう事前に厚生省に求めていたところ、小宮山厚生労働大臣(民主党)がそれを拒み、2009年財政検証で使用されていた経済前提を使うよう官僚に指示したということですので、実務上だとはいえ、厚生労働大臣も経済前提について確認しているわけです。また、この試算以外に政府・民主党による試算が存在しないことから、ここでは事実上の「民主党の試算」ということで話を展開しています。(なお、厚生労働省が現実的な数字に置き直して推計を出すまでに掛かる時間は数時間程度だということも、河野議員により明らかにされています。)

上記表は、上段に2009年(平成21年)2月23日付で公表された5年に1度行われる公的年金制度の『財政検証』における長期の経済前提を示し、下段に2012年2月10日に公表された民主党の新年金制度の試算における長期の経済前提を示しています。

かつて自公政権は、これら経済前提のもと年金給付削減の調整機能を働かせれば、モデル世帯において現役世代の50%水準以上の年金を受け取り続けることが可能であるとして「年金100年安心」(年金「100年安心」発言録)をうたっていたのですが、それに対する大勢の評価は「楽観的」「非現実的」「つじつま合わせ」というものでした。

2009年秋は衆議院選挙を控えていましたので、民主党議員は、ここぞとばかりに衆議院議員、参議院議員問わず舌鋒鋭く批判を展開していたものです。

2009年当時の民主党議員4人の国会発言

2009年、予算委員会など国会の中で『経済前提』に関する批判・追及を展開していた民主党議員は、調べた限りで5人でしたが、社会保険労務士でもある内山晃議員はすでに民主党を離党していますので、2012年3月現在でも民主党議員である4人についての国会発言を抜粋します。

掲載の順番は、以下の通りです。
1…2009年(平成21年)6月19日-梅村聡議員
2…2009年(平成21年)6月19日-長妻昭議員
3…2009年(平成21年)6月18日-川合孝典議員
4…2009年(平成21年)6月2日-蓮舫議員

なお、抜粋は、経済前提に関する発言部分を恣意的に抜粋したものであり、赤字部分は当方で重要と判断したものを色変換し、読みにくい漢数字はアラビア数字に直しています。

抜粋の目的は、経済前提の見直しが、事実上の民主党の約束事であったことを示すことにあります。

民主党では、コトあるごとに「個人の判断」「個人の見解」「個人の意見」という言い訳が聞かれますが、さすがに国会での発言まで安易に否定できるものではないはずです。

1…2009年(平成21年)6月19日-梅村聡議員

第171回国会 参議院本会議 第31号 平成21年6月19日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/171/0001/17106190001031a.html

○梅村聡君 民主党・新緑風会・国民新・日本の梅村聡です。(略)5年前、2004年の年金改革において、政府・与党は100年安心の制度であることを強調しました。しかし、次第にその看板のメッキがはげ、実はいいかげんな中身であったことが暴露されつつあります。その端的な証拠と言えるのが、今回の審議の過程で明らかになった財政検証のずさんさであります例えば、財政検証の経済前提は、5年前の財政再計算における前提より高い、名目賃金上昇率2.5%、名目運用利回り4.1%を用いており、これまでの経済情勢に照らしても極めて実現性の低い数字に基づくものとなっております

2…2009年(平成21年)6月19日-長妻昭議員

第171回国会 衆議院本会議 第41号 平成21年6月19日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/171/0001/17106190001041a.html

○長妻昭君 民主党の長妻昭でございます。(略)民主党は、本法案審議を通じて、現行の年金制度を生活できる年金とするため、最低保障年金の創設、年金の一元化など、抜本改革を主張してまいりました。政府の年金の財政検証でも、楽観的過ぎる経済前提の問題、所得代替率50%を維持するモデル世帯がほとんど存在しない問題など、数々の論点を指摘してまいりました。しかし、政府は、まともに答えようとしません。現行制度の微修正では日本の年金制度はもたないことを率直に認めることが、国民の利益にもつながります。年金制度が続いても、生活できない年金であれば、何のための年金なのですか。

3…2009年(平成21年)6月18日-川合孝典議員

● 第171回国会 参議院 厚生労働委員会 第17号 平成21年6月18日

○川合孝典君 民主党・新緑風会・国民新・日本の川合孝典でございます。(略)さらに、本法案の審議を通じて浮かび上がったのは、100年安心をうたった2004年の年金改革が早くも破綻しつつあるという事実であります。政府は、厚生年金の給付水準を現役時代の収入の50%確保という公約を掲げてきましたが、実はそれが極めて甘い経済前提に基づくものであり、現行制度のままでは実現不可能な状況となっていることが明らかとなりました。厚生労働省は、この経済前提に基づき、モデル世帯の年金給付水準が2038年以降、50.1%に固定されると試算していますが、最新の年金保険料納付率61.1%を基に試算すると48.9%となり、既に50%割れとなっていることも審議を通じて明らかとなりました。これは明らかな政府の公約違反であり、年金制度に対する国民の信頼が更に揺らぐことは避けられません。

4…2009年(平成21年)6月2日-蓮舫議員

第171回国会 厚生労働委員会 第12号 平成21年6月2日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/171/0062/17106020062012a.html

○蓮舫君 もう一つは、5年に1回行われる財政検証なんですが、モデル世帯の所得代替率は辛うじて50.1%で、2004年の政府の公約を維持はしているんですけれども、経済前提を少し厚労省の想定とずらす、低く見積もることによってこの5割はあっという間に割り込みます。制度自体がもはや100年安心、維持可能性について私は大きな問題があると思っております。本当はこの厚労省のこうした見込みが外れると一番だれがその負担を負うかというとこれは国民であって、保険料の引上げとか給付の大幅削減という形で将来世代に大きなツケを先送りしてはいけないと私どもは考えております。

○蓮舫君 100年間にわたる年金財政の見通しを検証する前提というのは、私は相当堅めに見るべきだと考えています。世界経済危機とか金融危機、あるいは新型インフルエンザの問題など、今、世界経済、特に日本もかつてない状況に置かれていると思っております。もちろん、こうした危機を克服するために、国内も世界も世界協調で経済を押し上げるための努力をするべきだとも思っておりますが、こうしたリスクも織り込んだ現実的な経済前提で財政検証を行う方が、私は国民に対する年金制度への信頼につながってくると思うんですが

○蓮舫君 運用利回りを0.5%高めに設定すると、給付水準を実は2%押し上げる効果があると。だから、この利回りというのはやっぱり相当堅めに見ないと給付水準に私は大きな誤差が生じる、誤差どころか大きな間違いが生じると思っているんですけれども、大臣、今までの話を伺っていて、私たちはやっぱり疑いを持たざるを得ないんですよね。確かに、一時期、単年度だけを切り取って、こんなに損が出たじゃないか、こんなに見通しが悪いじゃないかという数値を置くことで100年を見ることはできませんけれども、せめてこの10年、20年の数値を入れていったところで、どう計算しても5割の所得代替率というのは私は維持ができない。どうしても楽観的にあるいは逆に置いた数字だと見ざるを得ないんですが、いかがでしょうか。

○蓮舫君 いや、今回の財政検証で唯一現実的だなと私たちが思うのは出生率だけです。それ以外は非常に甘い

○蓮舫君 あるべき姿を前提に置くというのを否定はしませんが、あるべき姿までどうやって到達するかという政策も一緒に出していただかないと、それは極めて楽観的な数字だと私たちは思います賃金上昇率も、やはりこれは相当驚くほど高い数値が前提となっています。財政検証の前提では2.5%、実質1.5%プラスと想定されているんですが、平成10年から19年までの実質賃金上昇率の単純平均でも、これはマイナスなんです。

○蓮舫君 いや、厚生年金財政において賃金上昇率は収入そのものに直結するから、こここそ相当リアルな数字を置かなければ楽観的だという批判は免れないと思うんです。資料五を御覧いただきたいんですが、民主党として厚労省に試算をお願いしました。実質経済成長率、物価上昇率、名目賃金上昇率、名目運用利回りを、それぞれ過去10年平均、過去20年平均の数値を経済前提として置いていただいて試算をしていただいた結果です。過去10年の平均値の試算は、四ですね、ここではマクロ経済スライド調整は、これは機能しません。平成43年、今から22年後に厚生年金の積立金が枯渇します。過去20年平均の試算、機械的な試算五です。平成62年、41年後に国民年金の積立金が枯渇をします。

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ここでの過去10年平均、過去20年平均とは次の通り。

平成21年財政検証関連資料(2)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0526-6f.pdf
(PDF:733.21KB)
6ページより。

運用利回り賃金上昇率物価上昇率
過去10年平均1.5%-0.7%-0.2%
過去20年平均2.9%0.6%0.7%

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○蓮舫君 私どもは何も不安をあおろうとしているわけではなくて、より現実的に、10年、20年間の平均値、実質こういう経済前提だった数字だったらどうだろうかといったときに、やはり今の制度というのは100年安心なんだろうか、この制度設計はそろそろ見直すときに来ているんではないんだろうかという立場に立たせていただいているんです。 平成16年度改正のフレームは大きく4つありました。1つは上限を固定した保険料の値上げ、これは国民に負担を強いました。2つ目はマクロ経済スライドを導入して給付の自動調整を図るとした、これまだ機能していません。3つ目は国庫負担を2分の1に引き上げます。4つ目が積立金の活用。この4つの改正をして、積立金をおおむね100年間で財政均衡を図って、100年後に給付費を1年分だけ残して積立金を保有すると、次世代の給付にそこを充てるんだという説明を平成16年度には受けました。

ところが、財政検証の数値を現実的な過去の平均値を使うと100年ももたない。100年にわたってもちろん経済がマイナス成長になると私たちは見ていませんけれども、前提条件を楽観的にしないと持続可能性がもたないという制度が本当に100年安心なのかどうなのか。大臣、私、ここは御決断をするべきときだと思います。特に今回は相当大きな埋蔵金を活用しますし、制度が本当に100年安心なのか、いかがでしょうか。

以上、国会発言の抜粋でした。

2009年2月の財政検証では、2008年までのデータを使用しているので、100年に1度といわれる2008年9月のリーマンショックの影響は完全に吸収されていません。

また、2009年以降の出来事として、第2のリーマンショックの可能性も指摘される「欧州債務危機」が2009年10月ギリシア危機を発端として起こり、日本国内では、2011年3月に1000年に1度の大地震に見舞われ、原発問題と含めて多大な損害を受けました。

さらに、近い将来、同程度の大地震の可能性も十分にあるという予測まであり、首都圏直下型地震での被害予測では、最大112兆円という、現在の年金積立金にも匹敵する経済的被害が想定されています。

そうした状況において、2009年当時でも国会発言のように厳しい追及をしていた民主党が、政権交代後2年半経過してもなお当時の甘い経済前提を使用して新年金改革の議論をしようとしているというのですから話になりません。

2010年から2011年にかけての『アラブの春』のように、今は5年(財政検証は5年に一度)どころか1、2年で世界情勢すらガラッと変わる世の中なのですが・・・。

参議院調査室による情報誌でも「楽観的すぎる」と指摘

参議院には、議員の政策立案を支援する議会シンクタンクとして調査室というものがあるのですが、そこで発行している調査情報誌「経済のプリズム」の70号(2009年8月号)『マクロ経済と年金財政』では、2009年の財政検証の経済前提について次のように指摘しています。

参議院調査室 経済のプリズム70号(2009年8月)
マクロ経済と年金財政
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/
h21pdf/20097025.pdf
(PDF:328KB)

【36、37ページの結論を抜粋】

本稿では、厚生労働省が2009年2月に公表した「平成21年財政検証結果」における経済前提の見通しの甘さを主眼として分析を行った。

どんな経済前提が正しいか正解があるわけではないが、第3節で検討したように、この「検証結果」における経済前提は、民間シンクタンクの見通し等と比較して、年金財政にとって楽観的すぎる面は否めない

すなわち、この財政検証は、必ずしも年金財政の正しいリスク評価とはいえない。

本稿における第4節、第5節のシミュレーションは、いわば年金財政に関するリスク評価の追試を行ったものといえる。ここでは、経済前提のそれぞれの構成要素の状況悪化が年金財政にどのような影響を与えるかについて、所得代替率をベンチマークに分析を行った。

ここで重要なのは、マクロ経済スライドという制度が存在する以上、年金財政は少なくとも2105年までの期間で均衡させることは充分可能であるという点である。

別の言葉で言えば、所得代替率の下限を設けないならば、(極端なケースを除いて)年金財政の破綻はない。

もっとも、年金財政の破綻さえ回避できればよいという考えは適切ではなく、(所得代替率50%がそれに該当するかは別として)やはり適切な給付水準の下限というものも存在するように思われる。

本稿ではこの点について分析を行わなかったが、本稿で想定したような経済前提の下振れが起こった場合、給付水準の維持という意味で年金制度の見直しが迫られる可能性があるというリスクはやはりあらかじめ考慮に入れておくべきであろう。

また、厚生労働省の審議会でも、既にその意見集約は進んでいます。

平成21年財政検証の経済前提等に対する諸意見等

平成21年財政検証の経済前提等に対する諸意見等(平成23年10月 厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001rmnu-att/2r9852000001rnnl.pdf

第1回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に
関する専門委員会 平成23年10月14日資料3-2(PDF:212.2KB)

【国会審議】 1~3ページより抜粋

● 財政検証の発表に対して、非常にこの見通しが楽観的であって、逆に国民に不安を与えるのではないか。実質賃金上昇率は平成10年から19年までの平均マイナス0.6%から2%以上改善し、実質運用利回りは同期間の平均が1.7%であるところを4.1%と設定し、全要素生産性上昇率は0.7%から1.0%に引き上げられている。押しなべてこの前提が楽観的過ぎて本当に大丈夫か。

● 出生率は2007年の1.34より低い1.26とはなっているが、経済は長期的には回復するということにして賃金は年平均で2.5%、運用利回りは4.1%、実質経済成長率は0.8%を見込んでいるが、本当に良いのか。何か所得代替率が50%を維持しなければならないということがあって、逆算をしていろいろな数値を出したのではないか。

● 試算の前提が5年前に比べてかなり楽観的である。中立的で、本当に確率の高い前提に基づいて計算をすべきだが、政府の政策目標が全部達成したとすれば、あるいはバラ色の社会になったとすればこうなるという数値が出されている。厳しくても、本当の堅めの数値を使った試算を示すことで、国民の年金制度改正に対する機運が高まるのではないか。

● 現下の雇用状況や経済状況は大変厳しい状況となっている。そのため、不況対策、経済対策を行わなければならないが、その中で、余りにも楽観的な見通しに基づいて財政計算がなされているのではないか。こういう状況で推移してもらいたいという気持ちは分かるが、今の現状の中で果たしてそれが可能であるのかというところは再考する必要があるのではないか。

● バブル崩壊後は、消費者物価指数もほとんど上がらないし、標準報酬月額もほとんど上がっていないにもかかわらず、物価上昇率は1%、賃金上昇率は中位ケースでも名目2.5%、実質1.5%となっている。これは良すぎではないか。長い目で見るとこんなものと言うかも知れないが、バブル崩壊後の日本の社会においては、高度成長期は別だが、低い傾向が続いているのではないか。

● 所得代替率が50%を超えるということを逆算した希望的な数値ではなくて、過去10年、20年の実態から計算したものも参考までに出して、国民全体で議論するべきではないか。

● 平成16年改正で政府・与党は所得代替率50%を100年安心といって国民に約束したので、今回、無理矢理50%維持ありきの試算を公表した。労働力推計や物価上昇率、賃金上昇率、年金の運用利回り等、とても現実的とは考えられない希望的数値である。希望とか願望ではない実現可能な現実的な数値を再度設定し、所得代替率について再計算すべき。

● 足元の経済状況が深刻な事態にあるにもかかわらず、検証に用いられる前提条件は、出生率を除いて、名目賃金上昇率、名目運用利回り、実質経済成長率など、すべて高め、好転することになっており、到底現実に見合っていない。今回の長期見通しは、所得代替率50%達成という結論を導くために、前提条件となる数値を逆算したと見られても仕方がない。極めて恣意的で、第三者機関のチェックが全くないことなど、大きな問題をはらんでいる。

● 100年間にわたる年金財政の見通しを検証する前提というのは、相当堅めに見るべきである。世界経済危機や金融危機などを克服するために、国内も世界も経済を押し上げるための努力をするべきだが、こうしたリスクも織り込んだ現実的な経済前提で財政検証を行う方が、年金制度への信頼につながってくるのではないか。労働力率について、あるべき姿を前提に置くのであれば、そこまでどうやって到達するかという政策も一緒に出さないと、極めて楽観的な数字だと思われる。厚生年金財政において賃金上昇率は収入そのものに直結するため、現実的な数字を置かなければ楽観的だという批判は免れないのではないか。

● 平成3年から平成20年の18年間において、実質賃金上昇率が1.5%を上回る年度が一度もない。これを将来の推計に使うのは適切とは言えない。実質長期金利の設定に用いられた利潤率の計算について、総投資率などのパラメータが変化したことによる影響を考えた上で、現実的な数字と合っていないと考えられる部分については修正を入れる必要があるのではないか。

● 過去20年間のトレンドを見たときに、実際に実現可能性があるとはとても思えない数字になっているのではないか。役所や有識者の理屈があるのだろうが、国民が見たときにどう思われるのかということが大事なのではないか。

● 年金計算上重要な名目賃金上昇率2.5%、実質賃金上昇率1.5%といった数字は我々の実感とは遠くかけ離れているのではないか。政府の用いるマクロ経済に関する数値に関しては、その妥当性に関して大いに疑問がある。

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【行政刷新会議「事業仕分け第3弾」年金特別会計・制度のあり方(平成22年10月)】
4ページより抜粋

● 財政再計算の見積もりが甘い。将来必要な給付額を現在価値に引き直して、必要な額のどこまで積み上がっているのかという説明責任を明確にすべき。

● 積立金の見直しは、年金制度の抜本的な改正と連動させて行う必要がある。その前提として、年金財政、特に期待される運用利回りの合理的な改定を行い、その結果を公表すべき。

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【「年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会報告」
(平成 22年12月)】 5ページより抜粋

● 本検討会では平成22年度からのGPIFの第2期中期目標に先立ち、厚生労働大臣が示す運用目標の在り方について検討を行ったが、運用目標の前提となる平成21年財政検証の長期の経済前提についての意見が多く出された。平成21年財政検証は今後100年の年金財政を見通して、長期の実質経済成長率を0.8%、物価上昇率を1.0%とし、今後の労働力人口の減少を見込んで賃金上昇率(名目)を2.5%とした上で、長期金利(名目)を3.7%、運用利回り(名目)を4.1%としているが、この名目運用利回りについて、足下の経済実態から見て高すぎるのではないか等の指摘があった。

● また、平成16年の年金制度改正で導入されたマクロ経済スライド調整がデフレ経済下で機能せず年金財政が悪化したことが運用利回りの設定にも影響を与えたのではないかということや、GPIFにおける基本ポートフォリオの検討過程でも財政検証における運用利回りの水準について疑問があるとの意見があったことなど、運用目標の設定に関する課題が多く指摘された。

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【社会保障審議会年金数理部会「平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度
の財政検証」(平成23年3月28日)】 6ページより抜粋

● 現在、日本経済は明確にデフレから脱却できている状況ではなく、前提としている賃金上昇率等が高めの設定になっている可能性がある。特に、経済前提の基礎となったコブダグラス型の生産関数の計算において、労働時間が減少するにもかかわらず投資が続くことが仮定されている。経済のグローバリゼーションが進み、新興諸国への投資が増加している現状では、この仮定は高めの設定になっている可能性がある。

● 今回の財政検証における労働力率等は、例えば30歳代前半の女性有配偶の労働力率が47.7%から65.8%へ、60歳代前半の男性が70.9%から96.6%へ上昇するなど、より多くの者が働くことが可能となった状況を想定した「労働市場への参加が進むケース」に基づいて設定されており、今後の状況を注意深く見守っていく必要がある。

検討に必要な情報は出揃っているのですが・・・。

自公政権時代と同じに思える厚労大臣の年金観

少し横道にそれますが、平成24年度予算において、基礎年金の国庫負担の不足分を補うために『年金交付国債』という粉飾的な手法が登場してきました。

これは、行政改革やムダ削減、予算組み替えなどの2009年当時の公約
民主党の政権政策Manifesto2009
http://www.dpj.or.jp/download/325.pdf
(PDF:2.70MB)
を事実上放棄している民主党政権が、やると言っていなかった消費税の増税だけは実現させようとして考え出したカラクリで、消費税増税を既成事実化した陰湿さすら感じさせる政策です。

もし消費税増税法案が通らなければ、穴埋めする財源がなくなりますので、ダイレクトに年金積立金を取り崩す、もしくは年金給付をカットする、年金保険料が増額される等の影響が考えられますが、それは低年金者の暮らしも直撃する、国民の生活を人質にしているといっても過言ではない政策なのです。

下記の図は、ごく簡略化した年金交付国債の仕組みです。

年金交付国債の簡略図

ここで注目したいのは、実はその問題ではなく、年金交付国債に関する小宮山厚生労働省大臣の次の発言です。

● 小宮山大臣記者会見概要(平成24年度予算大臣折衝後)
平成23年12月22日 9:23 ~ 9:30 ぶら下がり
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r9852000001z2np.html

○記者 将来の年金財政とか給付に影響はでないのでしょうか。

○大臣 それはでません。今も年金の積立金は毎年度いろいろ取り崩したり、いろいろしながらやって、それで5年ごとに年金の財政の計算をして、ずっと100年後というか先まで安心なように組み立てていますので、その中に組み込まれるものですから問題ありません。

久しぶりに「100年安心」という言葉を思い出しました。
一応「100年後というか~」としていますが、その発言からは、現在の年金制度が、楽観的な経済前提の上に建っているのだという認識が感じられません。

もし2009年当時の民主党議員の国会発言が民主党の立場であるならば、とてもそのような言葉は出てこないはずなのですが、年金を取り仕切る厚生労働省のトップの認識がその程度だということは、はからずも民主党政権の年金に関するいい加減さ、無関心さを露呈しているように思われます。

ちなみに、偏りのないように触れておきますが、小宮山厚労大臣は、平成23年10月26日厚生労働委員会国会の場で100年安心の維持について懸念を示す発言をしています。

年金の試算を「頭の体操」とは・・・

民主党の試算が表に出たときに、野田首相は「調査会の一部幹部の頭の体操に使われたもので」と述べていましたが、まるでゲームであるかのようなその物言いからは、2009年当時の民主党の年金に対する真摯な姿勢が、もはや過去のものとなってしまったとの印象を受けました。

野田首相のようなベテラン議員は、廃止された議員年金もしっかりもらうことができますし、公務員組合として民主党を選挙で支え、知恵袋でもある公務員についても、共済年金は安全かつ多額の年金が保障されています。

自分や身内(官僚)が老後不安と無縁の世界にいるわけですから、野田首相に限らず、歴代首相が、抜本的年金改革を避けて問題を先送りし続けているのもわからないでもありません。

それにしても、野田首相の変節(※)は極端です。
財務省には洗脳専門の霊能者でもいるのでしょうか。

※検索語「野田 シロアリ 演説」で例の演説などが見られます。

「自民党の年金制度と比較するため」

経済前提を2009年財政検証当時のままにしていることについて、民主党の複数の議員がテレビで「自民党の年金制度と比較するため」と発言していますが、バラ色のヴァーチャル世界で通用する年金制度をいくら比較したところで、私たちが住む現実の世界の年金制度の答えには辿りつきません。

その言い訳は、まさしく「政策よりも政局」そのものです。

自民党も、経済前提について自己否定して独自に見直すような動きがあればよいと思うのですが、いまだにその動きが一部議員にとどまっているところが残念です。

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