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「40年」を超えても発生する任意加入の未納(国民年金)

今回は、国民年金の納付実績が40年あるのに未納が発生するという、国民年金の「任意加入制度」の欠陥を取り上げます。

これは、専門家でも知らない人が多そうな気がします。

国民年金の強制加入と任意加入

国民年金の強制加入と任意加入の間略図

国民年金は、20歳から60歳までの40年間の強制加入期間に、漏れなく保険料を納めることができれば満額の年金を受給できます。

そして、強制加入期間中に未納等による空白期間がある場合でも、60歳から65歳になるまで利用できる「任意加入制度」を利用すれば、保険料納付実績が合計40年になるまで最大5年間分の空白期間を穴埋めすることができ、通常65歳から受給できる国民年金を増額させることができます。

保険料の納付方法は、原則として口座振替によって行い、任意加入によって65歳までに国民年金保険料の納付実績が合計「40年」に達する人については、支払い停止の手続きをすることなく自動的に口座引き落としが停止する仕組みとなっています。

ここがポイントです!

支払いをやめる時に、手続きは必要ない。

これはあくまで65歳までに「40年」に到達する人の話ですが、この自動停止の仕組みが利点であると同時に問題を生んでいるのです。

3年の未納がある人の例

それでは具体的に説明します。

例えば、60歳までの国民年金保険料の未納期間が3年あり、60歳からの任意加入3年間で「40年」に到達するというケースを想定します。

3年の未納があるために国民年金に任意加入する人の例図

国民年金の任意加入は、60歳を過ぎてからでも加入できますが、ここでは60歳ちょうどから3年間任意加入するものとします。

すると、63歳の時点で国民年金の納付済み期間が「40年」に到達しますが、問題はその後の期間です。

保険料の納付が自動停止して「やれやれ」と思うのもつかの間、そのまま何もしないでいると、65歳までの期間で未納が発生し続けることになるのです。

任意加入期間の拡大図

その未納は何なのかと言えば、年金事務所の説明では「任意加入の未納記録」だということなのです。

国民年金の任意加入は、加入手続きをすると法律的には「任意加入被保険者」になりますので、任意加入期間中に何らかの事情で保険料が納められなかった場合に、その期間が未納記録となることについては理解できます。

しかし、保険料納付「40年」到達で口座引き落としが自動停止したということは、国もその事実を把握しているわけですし、それを超えた納付する必要性のない期間の未納部分については、その存在理由がわかりません。

未納発生の原因

なぜこのようなことになっているのか。

その理由は、口座引き落としが自動停止した場合でも任意加入は継続したままになっているからです。

年金事務所の説明では、国民年金の任意加入をした場合には、65歳の任意加入期間が終了するか、任意加入の脱退手続きするか、そのいずれかに該当しない限りは、保険料の納付が無い期間については「未納記録」として扱われるというのです。

しかもその未納記録。

納付実績が「40年」を超えるために年金額に反映しない未納であるとしても、2013年2月現在の年金事務システムにおいては、仕組み上、振込み請求させるようになっているのです。

40年を超えた未納記録の督促電話

40年を超えた任意加入の未納記録についても、強制加入期間中の未納と同様に、過去2年以内の時効にかからない部分については、督促電話がかかってきます。

未納3年の例で言えば、下記図のようになります。

任意加入期間の未納に対する督促電話の説明図

65歳直前の未納については67歳直前までが2年以内の時効の範囲内ですので、未納を放置していると67歳まで複数回督促電話がかかってくることになります。

言うまでもなく、年金額に反映されない部分の請求です。

過払いなのに督促電話・・・その原因は?

現在、国民年金保険料の未納の督促電話は、日本年金機構が委託した民間業者が行っているのですが、過払いになる未納分まで請求してくるその原因は、日本年金機構が民間業者に渡している未納データには、請求してはならない不正確なものまで含まれているからです。

日本年金機構から民間事業者に伝えられる未納データ

驚くことに、その未納データには、「40年」達成しているという結果は反映されておらず、そのため、40年超の理不尽な未納記録もその他の未納データと同様に扱われているのです。

当然、民間事業者はそのことを知りませんので、電話口では「未納があります。」「その分を払うと今からでも年金額が増額します。」と事実ではない説明をすることになり、その結果、意図せぬ過払いが発生することになるのです。

今回の話のもとになった人は、65歳の年金支給決定を受けてから約1年6か月も経過した66歳半の時点で督促電話がかかってきたのですが、これがもし、日本年金機構が「40年」達成者のデータを除外するなどのフォローを行っていれば、このような督促電話(納付案内)は掛かってこなかったでしょう。

一応、年金事務所では「払い過ぎの分は返還します。」と言うのですが、仕組みからして不信感があり、言葉を素直に受け入れることはできません。

繰り返される任意加入保険料過払いの歴史

一般にはあまり知られていませんが、現在のような「40年」達成と同時に口座引き落としが自動停止する仕組みがなかった時代には、比較的過払いが発生しやすいしやすい状況であったために、金額の詳細は不明ながら、多くの過払い金が発生していました。

しかし、当時の厚生労働省は、その過払いについては、法律上・制度上の理由により返還を拒否していたのです。

それが是正されたのは2008年になってからでした。

厚生労働省による年金保険料の過払い金の返還の推移

下記は、その当時の模様を記した記事です。
外部サイトより転載します。

国民年金の任意加入で過払い保険料を返還――社保庁
http://www.gyosei.co.jp/home/topics/jichi_kasumi08074.html

(株式会社 ぎょうせい)

(以下、転載です)
社会保険庁は、国民年金に60歳以降任意で加入し、受給額が満額に達する40年(480か月)を超えて無駄に保険料を納めてしまった人に対する過払い保険料の返還を始めた。これまで返還に応じていなかったのを改めた。ただ、対象となる人数や過払い総額は把握していないとしており、本人が申請しなければ返還されない。同省は「対象者の把握については今後、検討したい」としている。

4月中旬に、厚生労働省が同庁に対応を改めるよう通知した。同庁には5月中旬までに104件の還付申請があり、このうち36件について還付を決定した。

国民年金の加入期間は原則、20歳から60歳になるまでの40年で、保険料を全期間納付すると受給額が満額に達する。40年に満たない人らは、65歳になるまで任意で加入することで、受給額を増やすことができる。しかし2004年度までは、40年を迎えた時点で保険料の納付を停止する仕組みがなかったため、受給額が増えないのに40年を超えて保険料を払い続けてしまう事例が発生していた。

「社会保険庁」は、現在の「日本年金機構」です。

今回判明した過払いを生む仕組みは、2010年から始まった民間委託事業(※その1)における年金情報の情報共有システムの不完全さを表すものですが、そもそも、2008年の取り組みが、政治的な駆け引き(※その2)の中で行われた後ろ向きなものであったことが、今回の過払い発生の再発にも表れているように思われます。

※その1:関連外部リンク
国民年金保険料のご案内は、民間事業者に委託しています
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3847

(日本年金機構サイト内)

※その2:当時野党だった民主党が、国民年金保険料の過払い金の返還のために国会に「国民年金過払い還付法案」を提出すると、当時の舛添大臣率いる厚生労働省は、法律の運用を見直すことで、過払い分の年金保険料の返還を可能にしたというもの。

当ページについて

当ページは、弊メルマガ「年金、みんな怒っています!」25号の焼き直しです。

※サイト内関連ページ
第25号 日本年金機構(旧社保庁)にされた国民年金保険料の「架空請求」
http://www.office-onoduka.com/mag2/025_20130314.html

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